「思い出と記憶って、どこが違うか知っている?」犀川は煙草を消しながら言った。
「思い出は良いことばかり、記憶は嫌なことばかりだわ」
「そんなことはないよ。嫌な思い出も、楽しい記憶もある」
「じゃあ、何です?」
「思い出は全部記憶しているけどね、記憶は全部は思い出せないんだ」

森博嗣『すべてがFになる』


初回 8日間の日数制限内にOmiaiからLINEへ。デートへ。そして伝説へ

前回 彼女と岡山さくらカーニバルへ行ってきた


本日のデートコース

渋川動物園

渋川動物公園



無添茶房(ランチ)

無添茶房



ボウリング場



一風堂(ラーメン屋)


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無添茶房でメニューを眺めているときに、それは起こった。

「ここらへんに載ってる豆のスイーツって、なんかむちゃくちゃ甘そうだよね」おいらは「綜合豆花」「焼き立てパイ豆花」なる写真を指さして言った。

「まーくんって、こーいう甘い豆、苦手?」彼女がきく。

「はっきりいって苦手だね。というか豆類全般が苦手。枝豆くらいだね、美味しく食べられるのは」

「枝豆!」彼女が笑う。「じゃあつぶあんとこしあんだったらこしあん派?」

「それはどっちでもいいかな。あんこは食べられないこともない。まあ積極的に食べようとも思わんが」

「そうなんだ」

「あと許せないのが茶碗蒸しの銀杏。あれの存在意義がわからないよ」

「えー! 銀杏美味しいじゃん!」

「あとグリーンピースも」

「じゃあ、ピーナッツは?」

「あんまり食べないね。味はともかく太るからね」

「太るから!」彼女が微笑んだ。

帰宅すると、デートのはじめに彼女からもらった誕生日プレゼントのお菓子を開封してみた。

ピーナッツが入っていた。

受けとったときに中身は聞いたはずだが、わずか二時間足らずで記憶から抹消されていたのである。

ピーナッツは食べないとおいらが答えたときの彼女の微笑みを思い出そうとした。

どんな表情だっただろう? 憂いを帯びていただろうか?

だが、そんな記憶すら思い出せなかった。

ピーナッツ

つづき 4/28 彼女と小豆島旅行