ペアーズではいいねだけは多くもらえたから、Omiaiでの惨状が余計に際立ってしまう。

Omiaiをはじめたのがおととい。それからというもの、100人以上の乙女たちにポチポチいいねしてきた。

でもね、ゼロなんです。

なにがって、マッチングですよ、マッチングがゼロなんですよダンナ。

いや、それでも悪いことばかりじゃなかったのだ。

いいことゼロってわけじゃなかったのだ。

一瞬、心躍ったこともあったのだ。

きのう、会社のトイレでのこと。

うーんってきばってたら、ブッって音がした。

おいらのケツじゃなく、おろしたズボンのポケットの中から。

前かがみになって手をつっこみ、おもむろに取り出したるは、スマホ。

現代人には片時も(うんこのときでさえ)手放せない文明の利器よ。

で、電源ボタンを押して、ブン!と画面に現れたるは、


「【あゆ】さんとのマッチングが成立しました!」


Omiaiも文明も、たまには粋なことをしやがるのだ。

美味しいものは最後までとっておくタチのおいら。

あゆさんのプロフを見ることなく、そっとスマホをポケットに戻す。

家に帰ってからのお楽しみ、というわけ。

そして定時!

家路をたどる足の軽やかさたるや、まるで羽毛のよう。

ホップ・ステップ・ジャンプで、ふわっと自宅の敷地に着地。

玄関で靴を脱ぎ散らかし、廊下を数歩歩いたところで、Omiaiを立ち上げる。

母ちゃんの「帰ってきたかい?」にも反応せずに、アイコンをタップする。

ん? 「お知らせ」のベルマークのところに赤い丸がついている。

ベルマークをタップする。

ズン!

その瞬間から、おいらはその場から動けなくなる。


「あなたとマッチングしている【あゆ】さんは、イエローカードとなりました」



ついさっきまで羽毛だった足。

それがいまや鉛の1,000倍は重い、得体のしれぬ金属の棒と化し、今にもフローリングを突き破らんとしていた。