初回 あやみさん(38) 待ちとその不確かな顔

前回 あやみさん(38) #2 ところで今度お茶でも


あやみさん(38)
  • いいねくれて5/21マッチング。
  • 顔写真なし(ゲレンデ、スイーツ、料理、風景写真等あり)。
  • 金融業の事務と営業。
  • スパイスカレーが好きなので、仲良くなったらいっしょに行きたい。
  • 好き:ディズニー、星野リゾート、海外旅行、スノボ、読書、音楽、カラオケ、ゲーム。
  • 打ち解けるのに時間がかかるほうとのこと。
  • 1週間ほどやりとりするも、顔写真を見せてくれる気配なし。
  • 5/30、デートOKの返事をもらう。


デートしてきた。

場所は岡山市内のカフェ(というか喫茶店)で11時から。

喫茶店近くでカーナビ代わりのスマホにwithの通知。

3分後、店の駐車場に到着し、メッセージを確認。

「駐車場着きました! まささんはもう来られてますか?」

今着いたと返事して駐車場を出て店に向かっていると後ろから呼び止められる。

振り返ると、マスク姿の女性。タレ目で温和そうな目元。おっとりした雰囲気。

スノボーとかのアウトドアが好きというプロフィールから、派手で活発そうな人を勝手にイメージしてたので意外。

派手というより素朴という感じ。

席についてマスクを外したときの印象も「素朴」。

顔の造作は、ややぼんやりしていてとらえどころがない感じ。

シャープな美人ではない。かといって不器量でもない。

はたして好きになれるだろうか。

あんまり顔を点検しすぎるのも失礼と思い、広げたメニューに目を向け、「どれがいいですか?」とあやみさんに注文を促す。

ふたりとも店おすすめのコロンビア産コーヒー「クレオパトラ」を注文。

おいらは自覚のないまま緊張していたのか、着席そうそう顔汗が止まらない。

最初は指でぬぐっていたが、それでは追いつかず、ハンカチの出番。

「なんか汗が止まらなくて・・・」と言うと、「暑いですもんね~」と笑顔で受けとめてくれるあやみさん。

素敵な笑顔だった。笑うとタレ目がさらにたれて、顔全体からふわっと優しいオーラが放たれるのだ。そこに屈託や濁りはかけらもない。

それに色白。雪みたいな白さ。日にあたったことあるのかな?っていう白さ。

ボブくらいの長さの黒髪(白さがまた際立つのだ)をかけた耳も、やはり白い。

耳にはシンプルなチェーンピアスがついていて、笑顔に合わせて涼しげに揺れる。

首元も白くて涼しげ。

服装は白Tシャツの上に淡色系のワンピースの重ね着で、やわらかい印象だ。

なぜかワンピースの肩紐が頻繁に外れて(なぜかいつも右側)、それを戻す仕草がなんとも色っぽく感じられる。

と、書くと見た目の観察ばかりしていたみたいだが、じつに多くの会話がかわされたのだ。

話題は仕事とか休日の過ごし方とか読んでる本とか、すでにメッセージでやりとりしたものばかりだが、膨らみに膨らんだ。

おいらは聞いて合いの手と質問をいれ、あやみさんはにこにこ話しつづけた。

「いっぱいしゃべってごめんなさい」

「いえいえ。楽しいですよ」

「まささんってほんと聞き上手ですね! リアクションが楽しくて明るくて! それこそ心理カウンセラーとかなれそう笑」

「いやいや! とてもとても!」

「まささんってぜんぜん緊張しない人なのですか?」

「とんでもない! 僕だって緊張しますとも!(そういえばいつの間にか顔汗がとまっていた)」

「ぜんぜんそんなふうには見えないんですが」

「まあたしかに普通の人よりは対人的なもので緊張しにくいのかもしれません。でも今朝は少し緊張していましたよ」

「そうですよね。顔写真出してなくってごめんなさい。ひとつくらい載せるべきですよね・・・」

「いやいや、こうして素敵な方だとわかったので良かったですよ!」

「笑 ありがとうございます」

12時45分ごろ店を出た(滞在時間1時間45分)。

コーヒー4杯分の代金はおいらが払った。

「私にも払わせてください」と千円札を渡そうとするあやみさん。

「いやいや、ここはちょっと僕にかっこつけさせてください笑」

「ごちそうさまです! では次は私に出させてくださいね」

「やった! 次確定! かっこつけて良かった!」

「笑」
 
店の駐車場でLINE接続。

あやみさんは奥のほうに駐車しているということで、おいらのメルセデス・フィットの前でお別れ。

車に乗り込み、ナビやクーラーの温度をいじったりしてぐずぐずしていると、駐車場の奥から軽四が出てきた。

ハンドルはあやみさんが握っていて、こちらに気づくと笑顔で手を振ってくれた。

つづき あやみさん(38) #4 終わり