僕のペ ニスはきわめて緩慢な速度で上昇をつづけていた。

おそらくペ ニスは上昇していたのだろうと私は思う。

しかし正確なところはわからない。

エレベーターに乗り合わせたカップルの抱擁があまりにも二人の世界すぎて、方向の感覚というものが消滅してしまったのだ。

あるいは僕の存在そのものが消滅してしまったのかもしれない。

あるいはそれは下降していたのかもしれないし、あるいはそれは何もしていなかったのかもしれない。

#村上春樹
#世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド