初回 ペアーズ26日目 バツイチさつきさん(37) #1

前回 あなたのどこが好きか教えてあげよっか?

【彼女との馴れ初め】
  • 2022年8月23日、ペアーズでマッチング。
  • 同年9月3日、初めての対面デート(サイゼリヤとカラオケ店)。カラオケ店で交際OKの返事をもらう。

おいらが黙るとすぐに「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」と訊いてくる彼女。


去る11月12日(土)の京都旅行初日でも、それは相変わらずで。


「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」、京都駅構内でちょっと迷っているときも。


「いいや、怒ってなんかないよ」


「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」安井金比羅宮に向かう人混みの中でも。


「いいや、怒ってなんかないよ」


「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」、錦市場商店街で食べ物を物色しているときも。


「いいや、怒ってなんかないよ」


四条河原町から殺人的過密の市営バスに揺られて京都駅へ。駅から徒歩で京都タワーのスカイラウンジ「空-KUU-」へ。


スカイラウンジで高いカクテルを一杯ずつ飲み、あとはホテルへ戻るだけであった。


この日の総歩数は1万7千歩。とどめに市バスの殺人的混雑。


疲労が蓄積していた。


京都タワーの前に出て彼女が言う。「ちょっとコンビニでストロングゼロとか買いたい。あっちのほうにありそうだから適当に行ってみよう」


おいら「ちょっと待って。いまGoogle Mapで近いとこ探すから」


「・・・・・・」



買い物後、コンビニ前でタクシーは拾えず。


しかたなく京都駅のタクシー乗り場へいくと、そこには40人くらいの列。


「すさまじい行列だね。地下鉄乗ったほうが早そうじゃない。最寄り駅からホテルまでちょっと歩くけど」


おいら「・・・・・・」


「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」


「いいや、怒ってなんかないよ」


「顔が怖いよ」


「怒ってない」


おいらはこの日はじめての嘘をついた。


おいらはたしかに怒っていた。


地下鉄を提案されたことに対してじゃない。この状況で、怒っているか訊いてきたことに対してである。


重苦しい沈黙がつづいた。割り込みやクラクションやスピード違反なんでもござれのタクシーの車内で(なぜ京都のタクシーはこうも運転が荒いのだろう)、彼女がおもしろ画像をLINEしてくるまで。


喧嘩みたいになって彼女から折れてくるのは、とても珍しい。


そういえば彼女は言っていた。この日、何回目かの「ねえ、まあちゃん怒ってるの?」のあとに。


「今日はぜったい喧嘩しないようにしようね。わたし、この旅行、楽しい思い出にしたいの」


むろん、異存はなかった。


だが、こうなってしまう。
こうなってしまう。こうなってしまう。いつも。

つづき 「ねぇ笑って」麺屋 聖〜kiyo〜京都駅前店