彼女「今週は会えない」→彼女「動物園行きたい。ラーメン行きたい」

初回 ペアーズ26日目 バツイチさつきさん(37) #1

前回 動物園デート。山へ向かう車中での約束。


【彼女との馴れ初め】
  • 2022年8月23日、ペアーズでマッチング。
  • 同年9月3日、初めての対面デート(サイゼリヤとカラオケ店)。カラオケ店で交際OKの返事をもらう。

「次会うのは二週間後の京都旅行」


前々回の記事でそう書いた。


今週は会う予定じゃなかったのだ。彼女に土曜出勤があり、おいらとデートすると疲れがとれないからである。


だが、彼女からのリクエストで3日に動物園デート。さらには本日6日にはラーメンデート。


前例のないことである。どういう心境の変化だろうか。おそらく、おいらが同棲OKの返事をしたことと関係があるのだろうが。


それでも彼女が疲れを月曜日に持ち越さないように、今日のデートはラーメンだけで切り上げるつもりでいた。


しかし、店から出ると彼女が「ドライブしたい」と言い出した。目的地を決めずにぷらーっとドライブしたいと。


あてどないドライブは苦手なおいらだが、了承した。


とりあえず彼女の希望で西に向けて車を走らせる。


しばらくすると、引きこもりのおいらには土地勘のない地域に入る。


彼女には土地勘があった。


交通事故に巻き込まれて以来車の運転をやめてしまっている彼女だが、かつては祖母の家に行くために「何万回も通った」道らしい。


何万回も通ったわりには、道案内は曖昧で、指示出しのタイミングはいつも2秒くらい遅かった。


我々はふらふらと西進する。


途中、彼女から彼女の祖母の家に行く案が提示されるも、おいらが返事する前に、引っ込められてしまった。


畑があり、山がある。空があり、川がある。ススキとセイタカアワダチソウが群生し、風にゆられている。


窓の外を、ゆらゆらと時と田園風景が流れてゆく。


しばらくして、彼女の気が変わった。


彼女の祖母の家は、小さな港町にあった。


町の道幅は狭く、運転に難儀した。


「私はいつもそこで運転を変わってもらってた」と彼女が予告していたとおり、最後の曲がり角の狭さは凶悪だった。バンパーがこすらないように建物の角にポールが立っているのだが、根本からぽっきり折れていた。


ポールを張り倒した車の軌道を空想の筆で描き、心持ち内側を通るよう心がける。


家は、曲がり角を折れてすぐのところにあった。


が、これまでより道が狭くなっている上、駐車場となっている庭の入り口も狭い。


なんども切り返してバックで庭に進入し、軽四の前に駐める。雑草のうえに降り立つと、一足先に降りていた彼女が駆け寄ってくる。


「家が散らかってるのに急に来られても困るって伯母さんに怒られたけど、大丈夫」


何が大丈夫なのか分からなかったが、しばらくして伯母さんが出てきて、ほんとに散らかっているとのこと。


伯母さんが部屋を片付ける時間を作るため、彼女の提案で、近くの港に行った。


彼女が子供の頃よく遊んだという港は、寂れていて人っ子一人いない。我々は小さな魚市場の生け簀をのぞいたり、海に魚影やクラゲを探したり、レンガをひっくり返してフナムシを探したり(いなかった)、大量に積まれている牡蠣殻の用途について議論したりした。


二人で魚影を追っているとき、彼女が水面を指さした。


「あれコン◯ームじゃない?」


「ほんとだね。貝がたくさんついてるけれど、たしかにそれっぽい」


「うん」


「こんなとこでやったりして、人目は気にならないのだろうか」


「誰もこんなとこ見てないと思うよ」


「じゃあキスも余裕だね」


「絶好のキススポットだと思うよ」


おいらは彼女の方を見た。キスの体勢が整っていた。


家に戻ると、まだ片付いていないようだったが、伯母さんによると「だいぶマシになった」らしい。


我々はさっそくトイレを借りた。


奥の部屋は仏間になっており、何人かの写真が飾られていた。そのうちの一枚はお祖母さんのようだった。


仏壇の前に座った彼女は、りんを鳴らして手を合わせた。


お茶が出され、軽い世間話が交わされ、伯母さんとおいらは自己紹介をした。


「おばちゃん、お母さんには彼氏を連れてきたこと内緒にしてね」と彼女。


「どうして?」


「だって、お母さんがむくれるかもしれないじゃない。順番が違うって」


「そんなことじゃ怒らないと思うけど。でもわかった、内緒にしとく。しゃべるかもしれんけどね」


20分ほどで我々はお暇した。


おいらが庭から車を出すのに四苦八苦してるあいだに、彼女は伯母さんから質問攻めにあっていたらしい。


「彼氏とどこで出会ったの? どこの会社に勤めているの? いつから付き合っているの?」


そういうものだ。

つづき あなたのどこが好きか教えてあげよっか?