痔とウォシュレットと私、愛するあなたのため

初回 ペアーズ26日目 バツイチさつきさん(37) #1

前回 彼女「同棲したいけれど、一人時間は欲しい。それぞれに個室を」


【彼女との馴れ初め】
  • 2022年8月23日、ペアーズでマッチング。
  • 同年9月3日、初めての対面デート(サイゼリヤとカラオケ店)。カラオケ店で交際OKの返事をもらう。

お願いがあるのよ あなたの苗字になる私
大事に思うならば ちゃんと聞いてほしい

平松愛理『部屋とYシャツと私』

LINE電話で話し込んでたら遅い時間に。彼女に風呂は入ったか訊くと、電話する前に済ませてあるという。おいらはまだだった。いつも寝る前とか遅くに入るのだ。


「ねえ。まぁちゃんって、ちゃんとお風呂入ってるの?」


「ふわ~(あくび)」


「ちゃんと聞いてる? ちゃんとお風呂入ってるかって訊いてるの」


「聞いてるよ。おれだって入るさ。まだ寒くないからシャワーだけだけど。湯船には浸かる派?」


「私もシャワーだけ。湯船は、岡山に帰ってきてから浸かったことないよ」


「なんで浸からないの?」


「なんか両親が使った湯船に入りたくないんだよね。両親っていうか他人が入ったのはなんとなく嫌なの」


「ほお。じゃあプールとかもだめなんだ?」


「そもそもプールは行かない。それにどうせ子供がおしっこしてるだろうし。ぶるぶるって震えながら」


「じゃあ温泉も無理か」


「温泉はギリ、オーケイ」


「なんで? 温泉なんて子供からしたらおしっこ天国でしょ」


「そうだけど・・・せっかくの温泉だし。というか、まぁちゃん、お風呂でおしっこしてそう」


「おれ、もう42よ? 子供じゃない」


「お風呂の中でぶるぶるってしたら許さないから」


「ふわ~(あくび)・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ねえ、ちゃんと聞いてる? ぼんやりしすぎじゃない?」


「聞いてるよ」


「痔の話だけど、まぁちゃんもお尻洗うとき痛い?」


「むっちゃヒリヒリするよ」


「やっぱり、まぁちゃんも切れ痔だね。ウォシュレットも染みたりする?」


「俺、ウォシュレット使わないんだよね。嫌いなの」


「えー汚い!」


「いや、むしろ潔癖症よ」


「どゆこと?」


「だってさ、尻にウォシュレットが直撃したら、うんこさん混じりの水がそこらじゅうにスプラッシュするわけじゃん? 高濃度のうんこ溶液で桃尻がびちゃびちゃになるわけじゃん? 綺麗になるどころか、汚い範囲が拡大するわけじゃん?」


「うえー! 小学生みたいな汚いこと言わないでよ」


「だから、おれはトイレットペーパーオンリー。ごしごし念入りに拭きまくる。うんこさんがペーパーにほとんどつかなくなるまで」


「ちょ、ちょっと待って! ”ほとんどつかなくなるまで”? まぁちゃん、お尻にうんこつけて歩いてるの?」


「つけて歩いてないよ。”ほとんど”っていうのは言葉の綾よ。もちろん、うんこさんがつかなくなるまで拭いてるさ」


「なんか信じらんなくなってきた。まぁちゃんの潔癖症気味なとこ、いいなと思ってたのに!」


「だから拭いてるって。それにデートの日の朝は必ず風呂入ってるし」


「そんなの当たり前じゃん! 得意げにいうことじゃない!」


「おれはともかくとして、バナナマンの日村はいつもパンツにうんこつけてるらしいよ。奥さんが言ってた。洗濯するとき見ると、いつもついてるって」


「うげ! 想像しちゃった。サイアク! そんなこと言わないでよ、もう42なんだから!」


「ふわ~(あくび)」


「は~。お尻にうんこつけて歩いてるまぁちゃんか。おっさんやん! 100年の恋も一瞬で冷めるわ。もうだめかも。100年は無理にしても、ず~っと愛せそうと思ってたのに」

いつわらないでいて 女の勘は鋭いもの
あなたは嘘つくとき 右の眉が上がる

(中略)

もし私が先立てば オレも死ぬと云ってね
私はその言葉を胸に 天国へと旅立つわ
あなたの右の眉 みとどけたあとで

平松愛理『部屋とYシャツと私』

つづき 彼女が誕生日プレゼントに欲しいものPART2