プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #1 言えないよ


午前11時30分。あいにくの雨の中、あーさん指定の、岡山駅西口からほど近い場所にある洋食屋ブエナ・ビスタでランチ。
ふたりとも焼きカレーパスタを注文。料理が来るまでのあいだにドキッとする出来事が発生。
あーさんがハンドクリームみたいなものを手に塗り始めたのだが、「じつはこれハンドクリームじゃなくてアルコールジェルなんです。いい匂いがするんでつけてみます?」
って身体を近づけておいらの手のひらにちょこっとジェルをのせてくれたのである。
料理がきて、いろいろな話題が飛び交い、会話は盛り上がった。(と、少なくともおいらは思った)
店を出るとまだ雨降り。
まだ時間はあるかきくとあるというので、奉還町商店街をぶらっと歩いて、そのなかにあるカフェ・ONSAYA COFFEEへ。先に会計をすませて、二階で飲食をするスタイル。我々は温かい飲み物を注文し、会計はあーさんが持ってくれた。
建物の中は古かったが、それを活かすようなレトロな内装と小物たち。「SEIKOSHA」という刻印のある、まるで戦前からそこにかかっていたみたいに古く黒化した木製の掛け時計は、とうの昔に時を刻むのをやめていて、午前か午後かの11時くらいを永遠に指し示している。
二階席はすぐにカップルたちで埋まる。(ああ、世の中ではカップルというものがこうして存在しているのだなあ)
ここでは主に仕事関係の話題が多かったように記憶している。けっこう楽しく話せた。(と、少なくともおいらは思った)
途中、おいらはトイレに席を立った。
戻ってきてみると、あーさん、そそくさと荷物をまとめて「では、そろそろ出ますか」。
いかにも店を出るタイミングをうかがっていたという印象を受ける。
13時45分。店を出て、商店街のアーケードの下を岡山駅方面にむかって歩き出す。おいらは念のため訊いてみる。
「さて、このあとどうしましょう?」
「高島屋で友達の誕生日プレゼントを買います」
なるほど、おいらの思いすごしではなかったようである。高島屋は岡山駅東口にあるので、駅まで送ることにした。
西口の屋外エスカレーターをあがって構内に入った瞬間、あーさんが言う。「お車は西口周辺に停めてらっしゃるんですよね?」
「そうですね」
「では、このへんで」
「今日はありがとうございました。またどこか行きましょう」
「はい」
彼女はそう言うとさっと踵を返し、そそくさと歩いていった。一度も振り返ることなく。
つーことで、たぶん終わった。どこでやらかしちまったのか、ほとんど心当たりはないが、仕方ない。
糸は切れたのだ。次に行くしかない。
腰は重いけれども。
つづき
プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #7 並行
コメント
コメント一覧 (8)
え、そんな急に脈なしに!!
でも、序盤はハンドジェルとか塗ってくれたんですよ!
何か地雷を踏んだんですか?
まっさ
が
しました
逆にこれで切られたら他の人が出来てそっちが進んでるんだろうなと思います。その場合でももう少し思いやりのある行動をしてほしかったですよね…。
まだ終わったかは不明ですが、仮に終わってしまった場合は「その程度だった」と諦めがつきやすいかもしれませんね
まっさ
が
しました
あと、会っている間に次に会う約束をしないのは何故ですか?
まっさ
が
しました