プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #1 言えないよ



プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #5 デート01

デート行ってきたぜ。


店は岡山駅前にある炭軍司っていう焼き鳥屋。焼き鳥屋なのにワインが飲めちゃうのがウリらしい。


食べログの平均予算では3,000円~4,000円となっていてリーズナブルじゃんと思って提案したのだ(でも「カフェを選んでくれー!!」って、ナッパと戦いながら悟空を待ちわびるクリリンみたいに心のなかで叫んでたが)。


だが、それを聞いた職場の事務先輩からは「ほんま、まっさは阿呆じゃな。カフェにしとかれーてあれだけ言うたのに。前回のイタリアンで懲りんかったん? 炭軍司行ったことあるけど、5,000円はかかるでえ」って脅されたが、はたして。


店の前で風に吹かれながら、おいらは髪型を直した。


というのは、デート前に美容室で髪を切ったからだ。


ついで、自分の身体を見下ろして、腹の出具合を確認した。


というのは、1ヶ月半で5kg痩せて76kgになったからだ。


こんな具合に。

プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #5 デート02

マッチングアプリを始めて以来、ヴィジュアルという観点に限っていえば、過去最高に仕上がったのではないかと思う。


LINEしている読者からも


お顔がスッキリしてますね!!

頑張ってください!!

とか

これはええやん!!!
最高のじょうたいなのでは!!
イタリアンのデートもこれくらい仕上げておけば…

とかお墨付きをもらい。


さて、場面はふたたび店の前。約束の18時半になったが、彼女は来ない。


前を行き交うのは、これから飲みに行こうとしている非番の50代のオヤジ二人組や、龍が如くの雑魚キャラに出てきそうな派手な服装した恰幅のいいチンピラや、腕くんで大声で会話しながら歩いているレズビアンのカップルくらいである。


うむ。バックレられたのだとしたら、これが初体験である。まぁ、ブログのネタにはなるし、せっかくだから一人で食べて帰ってもいいかもしんない。。。


・・・なんて思ってたら、左の方からこちらに向かって息せき切って駆けてくる女性が!


暗がりで顔が見えず、もしこちらが手を上げて合図して、やっぱり彼女じゃなかったらっていう大惨事を想定したおいらは、ぎこちなく正面に向き直り、イチロー風のストレッチを開始する。


「遅れてすみませんッ!!」


そう声かけてきた女性の顔が炭軍司の灯りに照らし出された。写真とはだいぶ違うけれど、面影がある。彼女だ・・・たぶん。おいらより20cmくらい小さいとは知っていたが、こうして並んでみると、ずいぶん小柄に見える。


聞き取れないほどの早口で、謝罪の言葉をまくしたてるあーさんを制して、「まぁ中に入りましょう」と招き入れる。


店員にカウンター席とテーブル席のどちらがいいか訊かれ、おいらが彼女のほうを見ると、「テーブル席にしましょう」と。


我々が奥の四人がけのテーブル席につくと、さきほどの店員がやってきて、あらかじめ並べていた箸やカトラリーを二人分さげて、テーブルを二人用にしつらえてくれる。


その時、あーさん、緊張からか自分の箸をエルボーで薙ぎ払ってしまう。だが、気づいていないようなので、おいらは店員にあたらしい箸を頼む。そこでようやく気づいたあーさん、また謝罪を始めだしたので、また制する。


「大丈夫ですよ。それより仕事終わりの貴重なお時間をありがとうございます。それにお疲れなのに待ち合わせに遅れまいと走ってまでいただいて」


あーさん、またちょっと恐縮するも、我々が酒を注文する時、厨房にむかって大きな声で「すみませーん!」と呼びかける。呼吸も落ち着き、緊張もほぐれてきたようだ。


酒を待つ間、おいらは改めてあーさんを見た。写真ではちょっとキツそうな顔の印象があったが、じっさいは、ずっと柔和な感じだった。ほがらかで、快活で、表情豊か。肌の質感とかシワの感じは年齢なり(36歳)である。


で、店に滞在した2時間半のあいだに、いろいろ話したんだけれども、あ、いつものデートの展開とは違うなと序盤も序盤で感じる出来事があった。


おいらが、あーさんが土日休みなのに繁忙期で3月いっぱいまで日曜日しか休みがないことについて水を向けると、自分から業種や仕事内容について詳細に語り始めたのだ。


脈なしのお相手の場合だと、このへんの話は濁されるのがデフォルトである。


さらには前職の話(デザイン関係)やら、転職の理由やら、今の会社の採用面接(面接官の構成、2回の面接のはずが1回で採用がきまったこと、のちに直属の上司となる人とプロレスの話で盛り上がったこと)にまで話が及んだ。


「事務ってハローワークとかで探したら凄まじい倍率ですよね」とおいら。「それなのに事務未経験のあーさんが即決で採用されたのってすごいですよね」


「わたし、面接が得意なんです。ぜんぜん緊張しないんです」


「それはすごい」


「対等だと思ってのぞんでるんです。面接官は人を選びますが、私のほうだって会社を選びます」


「なるほど、それだと臆することなくのぞめますね。まぁ理屈としてはそうでも実行するのはなかなか難しいですが」


「そういう性格なんでしょうね。会社と対等なので背伸びして自分をよく見せようという意識もないんです。なので、欠点もはっきりと伝えます。これとこれはできますが、EXCELはほとんどできません、とか」


「それで受かるのがすごいなあ」


「のちに直属の上司となる人が面接で隣の人に言ってました。『今できないなら、できるように教えてあげたらいいだけじゃん』って」


「あーさんのそういう率直さが見初められたんですね」


「ありがとうございます。じつは同時期にもう一社受けてて、そちらも受かりました。やはり面接試験だけでした。学科があったらぜったい落ちてたでしょうね笑」


「いやあ、すごい。ほんとに面接でぜんぜん緊張しないんですか?」


「ぜんぜんしません笑」


「じゃあ僕と会うのは緊張しましたか?」


「すごく緊張しました!笑 昨日から。仕事で忙しく動いているときは大丈夫なのですが、ふとしたスキマ時間みたいなときに、『今日会うんだ。どうしよどうしよ』って」


「やっぱり就活の面接と、こういう男女の面接というか出会いは違うんですね笑」


「そうですね笑」


「あと、僕が変なやつかもしれないという可能性もありますしね」


「それも・・・ありました笑」


「笑」


あとほかには、おいらが27歳までフリーターしてたって言ったら、弟さんも同じような感じだったらしくて、弟さんエピソードも話してくれた。


あとは恋バナみたいなのと、マッチングアプリの話。


マッチングアプリの話で印象に残っている話をピックアップしておく。


Q:
マッチングアプリをするのは3年ぶり2回目ということだが、前回はどんな結果だったのか。また再開するに当たって緊張したか?


A:
前回はうまく行かないことが多く、途中であきらめて恋人を作れなかった。再開するときはすごく緊張した。


Q:
いいね300以上もらっているが、どういう心理状態になったか?


A:
いいね数は意識的に見ないようにしている。平静でいられなくなりそうだから。


Q:
いいね来すぎて、一人ひとりじっくり見る余裕はないと思うが、いちどスキップしたあと、「あ、やっぱりこの人いいかも」って思い直していいねを返すことはあるか?


A:
それはけっこうある。忙しいときにもらったいいねは特にそう。まさゆきさんもそう。私がいいね返してくるまでにタイムラグがあったでしょう?


Q:
今回マッチング5日でデートに誘ったが、早すぎると思わなかったか?


A:
思わなかった。まさゆきさんのプロフィールに「マッチング後すぐに会いたい」とあったのも理由のひとつ。中には一通目から「どこ住み? 会おうよ」と送ってくる人もいるが、そういう人はすぐにブロックしている。逆に何週間もやりとりしてるのに誘ってこない人もそっとブロックしている。


Q:
逆にブロックされた経験は?


A:
プロレスが好きだと言った瞬間にブロックされたことがある。だから今は、プロフィールに始めから書いている。マイナスだと取られる可能性のあることは、最初に出したほうがよい。面接のときに「私はこれができません」と申告したのと同じだ。


Q:
よくある奢り奢られ論争について。自分はデート代を奢るのは一向にかまわないが、奢ってもらって当たり前みたいな態度をとったり表明したりする女性には、正直がっかりするところがある。それについてどう思うか?


A:
それはそのとおりだと思う。そういうことは相談して決めることだと思う。ところで、こういう話をしたあとに、今日の会計で私はどういうふうに振る舞えばいいのか?笑

(まっさ:あ、僕が持ちますのでご安心を笑 気にしないでください笑)


で、じっさい店を出たときに(会計は1万円弱であった)、あーさんは「私にも出させてください」と財布を出しながら言ってきた。


「いや、ほんと大丈夫ですよ」と返すと、


「では、次のデートでは払わせてください」と来た。


こ、これは!!


しかし、しばらく歩いたあとで「今度いつ会いますか?」って訊いたら、なんかはぐらかされたので、おいらは慌てて「まぁ今すぐには予定ってわかりませんよね笑 あとでゆっくり確認していただければ」ってフォローして別れた。


それから20分後。手応えはあったんだけれどなぁなんて一人ぽつねんとバス停でスマホいじってたら、あーさんからLINEが。

プロレス好きカメラ女子・あーさん(36) #5 デート03


つづき
まっさラヂオ #5 「オンラインのあーさん。プロフ写真変更するか悩むおいら」