今朝の9時、愛車メルセデスフィットに乗り込む。


意気揚々とカーナビに「津山観光センター」と入力すると、カーナビの野郎が返してきた到着予定時刻に愕然とする。


「到着予定時刻:11:35」


おいぃぃぃいい? 11:00にぜんぜん間に合わねえじゃねえか! Googleマップ先生は一時間四十分で着くっておっしゃってたぞ、おいぃぃいいいい?


いや、カーナビの野郎は国道53号の実力を過小評価しているに違いねえ。岡山市北区から鳥取市に至る、信号のあまりない一本道のジツリキってやつを。


国道53号


そうに違いねえ。・・・たぶん。


それから1時間10分後、すでに53号を走り出してかなりたつが、「到着予定時刻:11:32」。


あかん! こいつはあかんでええ! 遅れることを連絡せねばッ!!


赤信号で止まった瞬間にスマホを取り出しLINEを開く。


あきさんからメッセージが来てる。なになに「おはようございます👀 黒いシャツにベージ


信号が青に変わる。


スマホを助手席に放り投げて運転再開。こんちきしょうめが。


しかし、10:30を過ぎたあたりでカーナビに変化が!


「到着予定時刻:11:05」


やっと53号様の偉大さが理解できたか、このボンクラめが。


最終的に「到着予定時刻:11:00」までなったが、じっさいに「津山観光センター」についたのは11:03である。


津山観光センター


敷地内に車を乗り入れたとき、店の前ののぼり旗のむこうの長椅子に腰掛けている乙女の姿が目に入った。黒いシャツにベージュのプリーツスカート。まるで宝くじの当選番号でも確認しているみたいに熱心にスマホを見ている。


車を駐車スペースに入れて、ええと、何色の服って書いてあったっけ?と思ってLINEを確認する。


09:55 あき おはようございます👀
黒いシャツにベージュのスカートで行きます🙇‍♀️

10:56 あき ついたらおしえてください🐱



11:03 まっさ つきました

しかし、長椅子の乙女はスマホに目を落としたまま。しかたくなく車を降りて乙女に声をかける。


「あきさんですか?」


「は、はい」そう言って乙女は立ち上がる。


174センチのおいらとくらべてずいぶん小柄な乙女である。150センチ台前半と言ったところか(いらん情報だが、おいらは長身な乙女が好みである)。マスク越しだが顔もかわいらしい感じである。


「いやあ、どうもどうも、まさゆきです! はじめまして! ちょっと遅れてすみません!」


「いえ、こちらこそ遠くからありがとうございます」


津山観光センターのほうを指しながら「ここでホルモンうどんが食べられるんですね!?」


「はい。ここで食べられますよ」ちょっと圧倒された様子のあきさん。


「外は暑いですし、さっそく中に入りましょう!」


店の中はがらんとしていて、我々以外に客はいなかった。


入ってしばらく立っていたが店員が出てくる気配がないので、おいらは奥の部屋までズカズカと歩いていって中に呼びかける。


ようやく出てきた女性店員にどこに座ってもよいか聞いてみると、よいとのこと。


「なら、あの奥のテーブルがいいです」と個室みたいになっているところを指差すあきさん。


おいらにも異論はなかった。


「会って早々すみませんが、ちょっとお手洗いに」席につくやいなや、おいらは席を立つ。


戻ってみても、まだ注文を取りに来てなかったのでおいらが店員を呼ぶ。「すみませえええん! 注文決まったのですけどおおお!!!」


二人ともホルモンうどん(900円)を注文する。


あきさん、なんだか笑いをこらえているような様子。


察するおいら。「すみませんねえ。僕声が大きくって。これでも遠慮しているほうなんですが」


「こ、声がすごく通って・・・。まさゆきさんがここまでシャキシャキしているとは思わなかったです笑」


あきさんはマスクを外しても可愛らしい顔をしていた。整っているというよりは、可愛らしいって表現がしっくりくる。


あきさんのバイトについて
まっさ「今日は何時からバイトですか?」

あき「今日は一日お休みです」

まっさ「なんか前にLINEで朝と夜のシフトって言ってましたよね。朝働いて、昼家に帰って、また夜働く、みたいな」

あき「コンビニなんです。いつも朝晩ってわけでもないんです」

まっさ「そうなんですね。どの時間帯が一番忙しいですか?」

あき「とくにいつとは決まってないですね。まあ深夜はお客さん少ないけど、あえて避けてます」

まっさ「それは危険だからとかですか?」

あき「そういうわけでもないんですけれど」

まっさ「まあ人間朝起きて夜寝るようにできてますものね」

あき「それもありますし、夜勤はいつも同じ人がやってるので」

まっさ「昼夜逆転してる人みたいな?笑」

あき「そうです笑 まあ夜勤は夜勤で掃除とかいろいろやらされますけどね」

まっさ「遊ばせてはくれないってことですね笑」

あき「そうです笑」

まっさ「コンビニの忙しい時間帯ですけれど、品出しのときは忙しいんじゃないですか?」

あき「うふふ」

まっさ「どうしましたか?」

あき「いろいろ訊かれてるなって笑」


あきさんの就職活動について
まっさ「あきさんが希望しているウェブデザインのお仕事、津山ではなかなかなさそうですね」

あき「そうなんですよね。だから岡山市か倉敷市で探している感じです」

まっさ「ネットで探している感じですか?」

あき「そうですね、あと派遣にも登録していて、派遣会社の人が紹介してくれる案件も見たりしています」

まっさ「パソコンはお持ちですか?」

あき「はい。マックブックを買いました」

まっさ「マックブック高いでしょう?」

あき「21万円くらいしました笑」

まっさ「高いですね! でもそれくらいの性能がいいやつじゃないとプログラムが動かなかったり重かったりするんでしょう?」

あき「そうなんです。Photoshopを快適に動かそうと思ったらそれくらいじゃないと・・・あ、21万円は盛りました。15万円くらいでした笑」

最初は21万円のを電器屋で注文したが、帰宅して冷静になり15万円のものに変更したとのこと。

まっさ「ウェブデザインのお仕事ってなかなか狭き門ではないですか?」

あき「そうなんです。訓練校の同期たちもほとんどお仕事見つかってなくって、いけないことなんですけど、それで安心してるところもあって」

まっさ「人間心理ですよね。でも、とにかくどこかに潜り込んで経験が積めたらいいですね」

あき「そうですねえ」


今日は緊張してたか?
まっさ「今日は緊張してましたか?」

あき「はい。緊張してました。まさゆきさんは?」

まっさ「いやあ、ぜんぜん」

あき「笑」


あきさんの顔も知らずにのこのこと津山にやって来たおいらについて
あき「そういえば、まさゆきさんに、わたしの写真見せてなかったですよね」

まっさ「そうですね。見せてもらってませんでした」

あき「それなのによく津山まで来てくださいましたね」

まっさ「そうですねえ。もしあきさんが好みのタイプじゃなくっても、津山観光できるからいいやって思ってたのは正直あります笑」

あきさん「あはは」

まっさ「で、じっさいこんなに可愛らしかった。ラッキーです笑」

あきさん「そう言うしかない流れじゃないですか!笑」

まっさ「いやいや、ほんと可愛らしいと思ってますよ笑 嘘をつくのは下手なんで笑」

あきさん「いつも見せてもらわないで会われてるんですか?」

まっさ「そうですね、基本そうです。顔見せてって言った途端返事がこなくなることがよくあるので」

あきさん「そうなんですか!笑」

まっさ「ええ笑 だからイチかバチかで会いに行ってます。ええやん、顔は直接確認すればって。ガチャ引くつもりで行ってます笑」

あきさん「で、どうなりましたか?」

まっさ「まあ、いろいろですよね。やっぱり見せてもらっときゃ良かったなってこともあります。それ以上詳しくは言いませんが笑」


マッチングアプリについて
あき「そういえばアプリもうやってないんですか?」

まっさ「アプリって?」

あき「まさゆきさんと前にやりとりしてた内容を見ようとしたら消えてて」

まっさ「ああ、Omiaiのことですか。あれから辞めたり再開したりして、今はやってません」

あき「ほかにはやっていないんですか?」

まっさ「マリッシュっていうのをやってます。マリッシュ、ご存知ですか?」

あき「知りません」

まっさ「ですよね笑 マイナーなアプリなんです。最近は開いてもないですが」

あき「なんでですか?」

まっさ「岡山の会員が少ないからです。いいね送りたい相手もいなくなってしまいました。それにもともとバツイチ・子持ちの人が多いアプリなんです。なぜあえてそれを選んでるんだって話ですがね笑」

あき「笑 でも開いてもいないって男性はお金がかかりますよね?」

まっさ「かかりますね。でも3,000円ちょっとです。Omiaiの4,000円とくらべれば安いですね」

あき「男性って大変ですよね、いろいろと」

まっさ「そうですねえ、お金もかかりますし、いろいろリードもしてこちらから動かなくちゃならないし。女性の方からデートに誘ってくるのってレアですものね」

あき「たしかに」

まっさ「それでデートに誘ったら誘ったで『まだ早いです。もう少しやりとりしてから』って言われるんです」

あき「そうなんですか!?笑」

まっさ「はい。逆に遅いと誘うタイミング逃しちゃって、そうこうしているうちに音信不通に」

あき「あるあるですね!笑 話題がなくなるっていう笑」

まっさ「そうそう。こうやって会えば話も無限に出てくるんですがね」

あき「ほんとそうですよね。ところで、どういう基準で会おうってなるんですか?」

まっさ「基準ねえ、うーん、話が弾んだかどうかとか?」

あき「でも返事って大変じゃないですか? いっぱい来るし」

まっさ「いや、男性はそうでもないですよ。女性ほどマッチングはしていないです。僕もモテてるわけじゃないので」

あき「そうなんですね。わたしの場合、『よし!返事するぞ!』ってやる気がわいたときにまとめて返しています。そして最近ではやる気が出なくって、あまり開けてません。久しぶりに開いてみると、やりとりが消えていたりします。過去のやりとりって一定時間たったら消えるんですかね?」

まっさ「あー、たぶんそれブロックされたか退会したかのどちらかですね」

あき「へえー! そうだったんですね!」

まっさ「『もう返事も来そうにないから切ろう』ってなったか、『彼女なかなかできないから一旦辞めよう』ってなったかでしょうね。毎月四千円は痛いですものね」


マッチングアプリで会った人について
まっさ「マッチングアプリでいろんな方とお会いしてきましたが、だいたい二回目につながらないことが多いですね。一回目のデートのあとに「今日はありがとうございました! また行きましょう!」って送ったら「今日は楽しかったです! ぜひぜひ!」って来るんですが、そろそろかなと思って二回目のデートに誘ってみると返事がこないんです」

あき「あはは」

まっさ「まあ中にはこちらから『ちょっと』って思った人もいましたが」

あき「そうなんですね! どんな人ですか?」

まっさ「いやあ、悪口になっちゃうんであまり言わないほうがいいかもしれないんですがね。ちょっとだけ言うと、毛玉だらけのカーディガン着て来た人とか」

あきさん、ひきつけでも起こしたみたいに、声にならない笑い声をもらす。

まっさ「ひょっとして布団から出てそのまま来られましたか、みたいな?」

あきさん、お腹が痛そう。


マッチングアプリで付き合った人について
おいら、Nさんのことを軽く話す。

まっさ「あきさんはお付き合いまではいかなかったんですか?」

あき「あ、ありますよ! Omiaiじゃなくてwithっていうアプリですが。まさゆきさんと同じですぐに終わりました」

まっさ「withもやったことあります笑」

あき「いろいろやってるんですね笑」

まっさ「すぐに終わるのってアプリあるあるなんでしょうかね」

あき「わたしの場合は、お相手が兵庫県で遠距離な上に、コロナも広まってなかなか会えずにお別れになりました」

まっさ「遠距離ってやはりむつかしいところがあるのかもですね」


あきさんが本名を聞きたそうにしていたので教えた。あきさんは聞きながらLINEでのおいらの名前表示を「まさゆき」から本名の「**真幸」に変更していた。おいらは遠慮してあきさんの本名は聞かなかった。


あきさんがお手洗いに行っているあいだに、おいらは会計をすませる。戻ってきたあきさんは申し訳無さそうに財布を取り出してお金を出そうとしていた。

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おいらの車で二軒目のお店「ソーズカフェ(SO's Cafe)」へ 。城西浪漫館という建物の一階にある。

朝の連続テレビ小説あぐりのロケ地ともなった、雰囲気のあるカフェである。

16283282953195

ソーズカフェ02
マントルピースの上にある色紙のサインは悪徳商会・八名信夫氏によるもの。


お茶後、併設されているお菓子売り場へ。あきさんはクッキーを二袋購入していた。


城西浪漫館の二階は、中島病院旧本館である。古い顕微鏡やら資料などがガラスケースに入れられ展示されていた。


古いオルガンが置いてあったのであきさんが鍵盤を押してみるも音は出ず。つづいておいらが馬鹿みたいに鍵盤を弾くポーズをしていたら、あきさんは笑いながら横から写真を撮っていた。


中島病院旧本館を見終わると、あきさんは時間を確認しながら「他にも行ってみたいですね」とぽつり。


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三軒目はイオン。

あきさんが眼鏡や服を見るのに付き添ったりヴィレッジヴァンガードでいろんなものを見たりした。結局何も買わず。

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四軒目は、あきさんの希望でアートギャラリー「PORT ART&DESIGN TSUYAMA(ポート アート&デザイン 津山)」へ。

香川県在住のガラス作家・杉山利恵氏の作品が展示販売されていた。


「PORT ART&DESIGN TSUYAMA(ポート アート&デザイン 津山)」


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五軒目は食肉店の石本商店。おいらが干し肉を買う。

時刻は15:30。これ以上行くところもないということで解散することに。


津山観光センターに戻る途中、あきさんが、「まさゆきさん、あれを見てください!」と前方の空を指差しながら言う。


どんよりとした曇り空の切れ間から光の柱が何本か地上に降りていた。なかなか荘厳な光景であった。


まっさ「綺麗ですね。なんだか虹を見つけたみたいな感動がありますよね」

あき「ほんと、そうですよね」

まっさ「また会いましょうね。社交辞令とかじゃなく」

あき「会いましょうね。わたしが岡山市に引っ越ししたら会いやすくなるんですが」


津山観光センターの駐車場での別れ際、あきさんが、ソーズカフェのお菓子売り場で買っていたクッキーのうちの一袋をくれた。10%の値引きシールがついているほうは自分が持って帰って食べるという。

クッキー


帰宅すると、あきさんからLINEが来ていた。写真とメッセージである。

まっさ、あきさん(30)に会いにいく01

まっさ、あきさん(30)に会いにいく02

まっさ、あきさん(30)に会いにいく04

まっさ、あきさん(30)に会いにいく05

まっさ、あきさん(30)に会いにいく07

17:18 あき 運転おつかれさまでした🐰


無事に帰られたでしょうか。。


17:50 まっさ 今着きました!写真もいっぱいありがとうございます!笑

17:51 まっさ 今日は楽しかったです。また会いましょう!


18:00 あき こちらこそ遠くからありがとうございましたー!楽しかったです😌
また🎶



18:21 まっさ ぜひぜひ👍👍


続き
あきさん その13 きれぎれ