丸三日音沙汰がない。どうやら人知れずこっそり港を出たらしい。


なんと水くさい!


最後にひとことくらいもらえれば、ささやかな出港式くらいやったんだが。里帆ちゃんにいいね送るもマッチングできなかった男たち、おいらみたいにメッセージが途切れた男たち、デートまで行くも付き合えなかった男たちなんかを誘ったりして。



いや、彼ら全員を呼ぶとなると「ささやか」じゃないか。250人以上の男たちが一堂に会することになるから、それはもう「立派」な出港式になるであろう。


抜けるような青空のもと、非モテ男たちで編成したマーチングバンドの調子外れの演奏が始まる。


そして出港の銅鑼を合図に、節分に特設舞台から豆まきする芸能人よろしく、里帆ちゃんが船上からカラフルな紙テープを投げていく。紙テープの一方は岸壁の見送り隊たちがにぎり、もう一方は船に結ばれる。


爽やかな初夏の潮風に揺れる、250本もの色とりどりの紙テープ。船の欄干から一部始終を睥睨(へいげい)しているウミネコたち。見送り隊の歓声。


そしていよいよ汽笛が盛大に港に鳴り渡り、吉岡丸が岸壁を離れていく。里帆ちゃんは控えめに手をふる。


おいらを含めて見送り隊の大半は紙テープがピンと張る前に手を離すのだが、おいおい泣きながら往生際悪く紙テープを握りしめてる何人かはずるずる引きずられるように進み、そのまま海に落下するのだ。



船が水平線のむこうへ消えたあと、我々は意気揚々と肩組んで近くの旅館へ引き上げ、畳敷きの大広間で酒盛りをする。海の幸やら里帆ちゃんとの思い出話やら、出港式で海の藻屑と消えた男たちの武勇やらを肴にして。夜が更けるまで。


すべての非モテたちに乾杯!



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