ただいま会社の定期健康診断のまっさい中で、おいらも運営スタッフのひとりとしてそれなりに慌ただしい日々を送っている。


長丁場なので、それなりに”事件”も起きる。


胃健診があるから前日の夜九時いこう食べちゃならんつってるのに、確認してみると朝食がっつり食べてるので追い返そうとすると逆ギレする人。


「健診当日の朝一番の!」つってるのに前々日に採取したおしょしょんを健診前日に検便までそえて後輩に持って行かせる人。


栓をいいかげんにしてたせいで、漏れ出ちまったおしょんしょんまみれの容器を持ってくる人。


便二日法っつーて直近三日以内の”べつべつの日に”採ったうんちょつってるのに、一週間前の同じうんちょから採った検体を持ってくる人。


おとといには、健診中に鍵をなくした男性(以降、Aさん)がいる!っつー一報が。


Aさんは去年もなにかしらのトラブルを引き起こしており、さんざん振り回された記憶がある。


駆けつけてどんな鍵か訊くと「家の鍵と自転車の鍵をわっかでいっしょにしてたやつなんだけど」っつーから「家の鍵! そりゃあ大変だ! 探しましょう!」つったら、「いや、俺仕事あるから現場に戻るわ。あとはよろしく」って早々に引き上げやがる。


おいらもあちこち探しまわったし、健診を委託してる外部スタッフにも健診中と健診後に、健診車やらあちこち探しまわっていただいた。


だが、なかった。


健診は午前で終わった。午後二時半くらいになって「そういえば」と思い出し、先輩事務と保健師(ともに乙女)に「鍵が見つからなかったことをAさんに電話しました?」って確認したら「え? まっさ、まだ電話してなかったの?」と。


製造現場の作業員であるAさんは電話をもたされていないので、電話をもってる同じ部署のBさんに連絡した。


それから五分後、Bさんから電話が。いかにも申しわけなさそうな声音である。「あのお、Aさん、鍵はロッカーにあったからもうええわって・・・」。


「あの、これBさんに言っても仕方ないんですが」とおいらも申しわけなさそうに言う。「それならそうと電話してもらえればよかったのですが」


「やっぱりだいぶ探されましたよね?」


「ええ、外部スタッフも含めて大騒動でした」


おいらは、ことの経緯を先輩事務と保健師に報告した。


保健師「なら、電話せえよ!」


先輩事務「ほんとそうよ! あの人、前もなんかやらかしてたよね!」


おいら「ほんとですよね! でもあれくらい鈍感だと悩みなく生きられそうっすよね!」


保健師「いや、まっささんもたいして変わらんですよ笑」


保健師はあの”ケーキ事件”をいまだに根に持っているのである。


ちょっとまえのことだが、先輩事務が我々ふたりのためにケーキを買ってきてくれたことがあった。モンブランとプリンケーキである。


保健師はその日忙しそうだったので、おいらは先に食べることにした。プリンケーキがじつにうまそうだったので、食べた。


翌朝、保健師がつかつかやってきて言った。「まっささん、プリンケーキ食べたでしょう?」


「どうしてそれを? どんなケーキがあるか、箱開けて見てたの?」


「いや、先輩事務さんから聞きました。「モンブランありがとうございます」ってお礼言ったら「あらモンブランのほうにしたの?」って。わたし、あの店のプリンケーキ、前から食べたいと思ってたんですよ」


「バレましたか」


「ふつーどっちがいい?って訊くもんですよ! それが男っていうもんですよ! レディーファーストっていうもんですよ!」


食べ物の恨みは怖いのである。