MY LITTLE LOVER『YES ~free flower~』♪

作成:2019/08/04
更新:2022/05/21

MY LITTLE LOVERといえば、みなさん、どの曲を思い浮かべますかな?

デビュー曲『Man & Woman』? それともミリオンヒットした『ALICE』とか『Hello, Again 〜昔からある場所〜』?

もちろんそれらもいい曲ぞ。おいらも好きぞ。

え? 『ハローアゲイン』ってJUJUの曲じゃん?だって?

若い人たちの多くは、そういう認識なんだろうな。ジェネレーション・ギャップ。光陰矢の如し。

そういうものだ。


MY LITTLE LOVERってどんなバンド?

MY LITTLE LOVERは、1995年に結成されたギターとボーカルの男女二人組バンド。ミスチルなどを手掛けている小林武史がプロデューサーをつとめ、小林自身もファースト・アルバム以降キーボードとして加入、三人組ユニットに。


デビュー曲『Man & Woman』は、初登場こそオリコン48位だったものの、その後ロングヒットを記録。9週目にしてTOP10に食い込む(オリコン最高7位、累計売上917,450枚)。



二曲目のジンクスを破り、『白いカイト』もまぁまぁ売れた(累計売上約50万枚)。



この二曲で、マイラバの名が世間に広く浸透したわけですな。じっさいにCDを買ったのは数十万人だったけれども、「もっといい曲が出たら買ってもいいかな」と思っていたリスナーはそれよりもっといたはずなのだ。ようするに、爆売れする準備はできていたわけですな。

で、そこに『Hello, Again 〜昔からある場所〜』が投下された。

これが売れに売れた。ダブルミリオンに迫る売上ぞ(累計売上1,848,820枚)。





次の曲『ALICE』もミリオンで、二曲連続ミリオンセールを達成、時代を代表するバンドになる。



小林武史個人の名が爆発的に認知されたのもこの頃で、音楽プロデューサーといえば、小室哲哉か小林武史かみたいな時代(いわゆるTK時代)でしたな。余談であるが、アーティストではなく、プロデューサーの名前でCDが売れるという現象が始まったのはこの頃からでしょうな。


売上という面で見れば、マイラバのピークはこの二曲を出した頃ということになる。

五曲目『NOW AND THEN ~失われた時を求めて~』は約65万枚売れたけども、前二曲と比べるとさみしいものがある。その後も曲を出すたびに売上を落としていき、八曲目の『Private eyes』では、とうとう10万枚を割ってしまう。デビューからたった二年半でこの落ち込みなのである。


バンド内の出来事として、1996年の小林とボーカルAKKOの結婚(2008年に離婚)、二回の活動休止、2002年のギタリスト脱退、2006年の小林の脱退がある。二人のメンバーの脱退で、現在は「My Little Lover」に表記を変え、akkoのソロプロジェクトとして活動している。


マイラバ衰退期にオリコン一位をとった『YES ~free flower~』

マイラバってあれだけ売れたのに、意外にもオリコン一位をとったのはたったの二曲なんですな。一曲はもちろんあの大ヒット曲『Hello, Again 〜昔からある場所〜』。

で、もう一曲がこの『YES ~free flower~』である。



え? 知らんって?

まぁ、45万枚くらいしか売れなかったから無理もない。ミリオンヒットを記録した
『Hello, Again 〜昔からある場所〜』『ALICE』以後の急速な衰退期の作品であり、たぶん発売週に強敵がおらず、棚ぼた的にとれた一位なのだろう。

でも、おいらはこの曲が一番好きなのよ。当時高校一年生か二年生だったおいらが、クラスメートから借りて何度も観た映画『スワロウテイル』の劇中歌だったことも影響してるかもしれん。

でも、やっぱり曲自体がいいと思うのだ。

けだるくて、切なくて、でも疾走感があって、さわやかでもあり、でもやっぱり切ないっつーか。AKKOのにじむような透明感のある歌声が素敵なのは言うまでもないが、ドラムの音がちょっと独特な感じがする(音楽に詳しい人教えてクレメンス)。

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歌詞については、想像力を働かせて、行間をかなり読み込まないと意味がわからない。


「言葉ひとつ 重く消えるよ
 恋の終わりは 夏の香り
 急ぎ足で 帰る途中で
 振り返ったら 影が伸びた

(中略)

 深く眠る ずっと眠るよ
 待ちわびたのは あなたのため」


「恋の終わり」「夏」ってワードと、歌詞全体の雰囲気から、主人公はおそらく中高生くらいの女の子なのだろう。

失恋したばかりの女の子。彼氏から別れを切り出された。あるいは、好きな男の子に告白するも振られたか、べつの女の子のことが好きだと話してるのを立ち聞きしたか、そんなところだろう。

夕暮れの中、下校する女の子。
失恋のショックでついつい急ぎ足になる。途中、ふと、なにかを思い出し(あるいは彼の気配を背後に感じて)、足を止めて振り返ったら、自分の影が路面に長く伸びていた、と。

ベッドの中でこんこんと眠りにつく。「ずっと眠る」つもりでベッドに入ったのだ。

「重く消える」彼の「言葉」。それをためらいがちに発したときの彼の表情と、たたずまい。「言葉」を受けて、痛みと「寂しさ」と「ときめき」が嵐のように交錯した自分。あの時あの場所をそっくりそのまま反芻する。何度もなんども。そこに含まれる全てをまるごと「YES」と肯定して。

この閉じた夢の中では、あの痛みも寂しさもときめきも失われることはない。あのうだるような夏も終わることはない。永遠にぐるぐる廻り続けるのだ。真空パックされた、出口のないアドレセンス(青春)なのだ。

曲の最後、Aメロとサビがひとつに重なり合う。そして曲は終わってしまうのだが、リスナーの心の中ではBメロが続いている。夏は過ぎ去らず、同じ区間をループするのだ。消えない陽炎みたいに。そして、2019年になった今でも廻り続けているのである。